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第一話「私の名前は」
春、桜が咲く頃。
全てが目を覚まし、新しい物語を紡いでいく。
そしてここ、麻帆良学園中等部にも新しく懐かしい物語が始まろうとしている。
「同じ道を歩めばまったく同じ生き方になるとは限らない。」
某哲学論より抜粋
桜が舞う、それはまるで夢の世界だ。
全てが桜色に染まりあたりを塗りつぶす。
言うなればこれは一種の幻想であろう、中に居る人には綺麗な風景を。
そして外から見る人には一つの芸術を見るように。
私はその桜吹雪の中を回りながら歩いている。
こんな状況なのだ、嬉しくて踊りたい気分。
今日から中学生、しかも学園都市と名高い「麻帆良学園」への入学だ。
ついでに寮で暮らす。
親元を離れるのは嬉しくてたまらない。
やっと、やっと自分が思い描いていた場所への入学、これを喜ばずに居られようか。
「♪〜♪〜」
ついに鼻歌まで歌いながら桜並木の登校道を歩いていく。
ふいに風が悪戯をする。
地面から思いきり風が吹き抜け、落ちていた桜中に舞い私の視界を遮る。
「うわっ」
流石に驚き歩みを止め、その場に留まる。
途端背中に何かが当る感触と共に衝撃に耐えられず私の体が地面へと引き寄せられる。
「きゃ!!」
「うひゃー!!」
地面に落ちている桜が再び中に舞う。
これは人工的に起こされたものだ。
そう、例えるなら誰かが地面に思いきり倒れたとか。
「あいたたた」
「あちゃー、やってしもうたー」
私は揺れる頭を抑えつつ、上に乗っかっている人物に話しかける。
「えーと、のいてもらえますか?」
ちょっと遠慮気味に言う、まあぶつかっても仕方の無い状況だったので。
上に乗っかっている人物は少女だった。
髪は黒く長く綺麗な顔立ちをしている子だ。
「あわわ、ごめんなー」
少女は慌てて飛びのくと自分の服の汚れを落す前に私に手を差し出してくれた。
行動一つ一つが上品で和服でもきたらさぞかし似合うだろう。
しかも、やさしい。
ううっ、なんか自分が惨めになってきた。
起き上がったら文句の一つでも言ってやろうかと思ったが、こんな子に対してできるわけがない。
「ん? イタイ所でもあったん?」
心配そうに見つめてくる少女の言葉で我に帰り体を起こした。
「ええ、大丈夫です。」
私は体をひょいと起こし大丈夫だという感じのポーズを取ってみせた。
すると少女はホッとした表情で次に驚いたような顔をする。
「そう、よかったわー。 あれ? それ学園の制服やない?」
少女は私と良く似た格好をしている。
まあ、制服が同じだっただけだが。
「うん、私今日からここの学園に通うんだ。」
にっこりと楽しそうに答えると、目の前の少女は嬉しそうな顔をして
「私もやー、今日からこの学園に通うんよー」
と答える。
と言うことはつまり、この子は私と同じ年?
ちょっと考え事をしていると少女の後ろから声が聞こえてくる。
「・・・のかー!! まってよー!!」
とても気分の良い足音と鈴の音とともにツインテールの女の子が駆け寄ってくる。
見たては、とても元気の良さそうな女の子だ。
「まったく、インラインスケートは乗り始めであんまり飛ばすと危ないわよ」
その女の子はあの速度で走ってきたのにも関らず息を切らさず、ぶつかってきた少女に話しかける。
友人だろうかとキョトンとしていると
「あははー、ごめんなーもう人にぶつかってもうたー」
少女は恥ずかしそうに女の子に告げる。
「はあ!? まったく、ちゃんとあやまったの?」
女の子が半ばあきれた顔で言う。
「あやまったでー、ついでにその子は今私の目の前にいる子やー」
ジャーンと言わんばかりに私の方向へと手を向ける。
「え、えと、どうも」
私は何をして良いかも分からずとりあえず頭をさげる。
「ごめんねー、うちの連れが。 ん? その制服は」
女の子も少女と同じ反応を見せる。
「あ、今日からここに通うことになったんです。」
私は一応説明をする、少女の友人らしき人物は手を差し出して
「私と一緒だ、名前は 神楽坂 明日菜 よろしくね。」
にこやかに笑いかけてきた。
「あ、はい。」
私も握り返そうと手をだすと別の人物の手に握られてしまう。
その手は少女のものだった、少女は嬉しそうに笑い。
「私は、近衛 木乃香 よろしくなー」
私は戸惑いはしたが心穏やかに。
「私の名前は 生野(いくの) 海里(かいり) よろしくね」
笑い彼女達の笑顔に答える。
ふと又、桜が舞う。
まるで私達の出会いを祝福するかのように。
「綺麗やなー」
「そうね」
「はい」
そして私のここでの不思議な物語幕があがるのであった。
別談
桜吹雪を見終わると同時に神楽坂さんが声を上げる。
「ああーー!! マズイ遅刻寸前だーーー!!」
「ええ!! やばいんちゃうん!?」
近衛さんも驚き時計を見ると走り出そうとする。
ふと私の腕が引っ張られる。
「ほら生野さんも行かないと遅刻しちゃうよ」
「そやでー」
ふたりが笑いながら腕を引っ張る。
さて、遅刻してはマズイここは走るか。
「はい!!」
元気良く返事をして私は走り出した。
第一話「私の名前は」完